東川篤或『学ばない探偵たちの学園』 感想

東川篤或といえば『謎解きはディナーの後で』でお馴染みのミステリー作家で、主にユーモアミステリと呼ばれるような作品を多く執筆している。

私自身はずいぶん前に『謎解きはディナーの後で』を読んだ記憶があるが、それ以外の作品は読んだことがなかった。

今回読んだ『学ばない探偵たちの学園』は、鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの第1作目で、主人公の赤坂通が鯉ヶ窪学園に転校し探偵部に入部してしまうというところから始まる。

まずこの作品で目を引く要素はキャラクターの個性だろう。探偵部部長多摩川、部員八橋を筆頭に個性あふれるキャラクターが多く登場する。ただ少し気になったのはキャラクターが多すぎることだ。個性の強いキャラがいるのに、人数が多すぎて個々の魅力が出しきれないまま終わってしまった感が否めない。探偵役もいるにはいるがあまり目立っていない。まあこれはシリーズ物なのでこの後にキャラの深掘りがされていくのかもしれないが。

そして、ミステリーなのに全体的に緊張感がない。

しかし、だからといって事件の内容も軽いのかといえばそうではない。普通に人が死ぬ。私は最初に殺人事件が起こった時、それまでの空気感とのギャップを感じ少し驚いてしまった。この作品の骨組みの部分はあくまでミステリーなのだ。私はそこまでミステリーに詳しい訳ではないので大して分析もできないのだが、ミステリーとして結構しっかり作られているのではないかと思う。トリックが現実でできるかは疑問だが、素直に驚かされた部分もあった。

 よく考えれば『謎解きはディナーの後で』の影山も安楽椅子探偵のスタイルをとっているし、あの作品も本格ミステリーだったのだと再認識させられた。

ミステリーというのは他の文芸作品とはまた違う独特の世界だと思う。探偵ものの漫画は好きなのに小説はあまり読んで来なかったのだが、過去の名作を読んでミステリーを勉強するのも楽しそうだ。