あさのあつこ『The MANZAI』 感想

The MANZAI』はあさのあつこの人気シリーズのひとつである。しかし、私はその存在を認識していたのにもかかわらず、今まで手を出してこなかった。私は好きな作家と聞かれたらあさのあつこと答えるぐらい、あさのあつこの作品が好きだ。なのになぜか読んだことがなかったのだ。どうしてだろう。『The MANZAI』というタイトルのせいだろうか。昔の私は野球や近未来SFやテレパシー少女には惹かれても、漫才には惹かれなかったらしい。

 

主人公は中学2年生の転校生瀬田歩(せたあゆむ)。彼は色々あって心に傷を負っているのだが、クラスメイトの秋本貴史(あきもとたかし)から突如漫才コンビ結成の誘いを受ける。

というところから話は始まり、歩が秋本やクラスメイト達との関わりの中で成長していく様子が描かれていく。

歩は秋本の幼なじみの萩本恵菜(はぎもとめぐな、以下メグ)を好きになるのだが、メグは秋本のことが好き。それでいて秋本は歩が好き。といったような矢印が一方通行の三角関係が展開されたりもする。秋本の場合歩への感情が恋愛なのか友愛なのかはっきりとしていないが、あさのあつこにはあまり愛の種類の区別はないのだろう。(確かなにかでそんなような記事を見た気がするがソースが全く分からない)

 

The MANZAI』は1999年から始まって全6巻で完結している。大体20年ぐらい前の作品ということになるのだが、全く古さを感じさせないのがあさのあつこである。

とにかく登場人物がみんな瑞々しくて、魅力的なのだ。それでいてリアルで、切実で、読んでいる間苦しくなることが何度もあった。なんであさのあつこはこんなに真に迫った言葉を紡げるのか。読んでいる自分にも刺さる言葉ばかりだ。でも決して教訓めいたことがある訳では無い。歩も秋本もメグも本当に必死で一生懸命で、そんな姿に心打たれる。

 

本当に素晴らしい作品だった。なのに全然上手く説明出来ない。好きな作品であればあるほど言葉が出てこなくなる。悔しい。読んでて楽しい作品と研究して楽しい作品は違うのかもしれない。

なんで早く読まなかったんだと思う反面、今読んだからこそ刺さるところもあるだろうと思う。とにかく読んでよかった。

高校生編も出ているようなのでそちらも早急に読みたい。